全受賞作品とコメント2015
2014年11月〜2015年10月に出版された本から
高校生にすすめたい本を、
埼玉県の高校司書がピックアップ!
著者・編集者と高校司書のコメント
君の膵臓をたべたい
住野よる 双葉社
住野よる先生からコメントをいただきました
「君の膵臓をたべたい」は特に高校生の皆さんに読んでほしくて書いたお話です。高校生の頃、つまんないことや悩ましいことが色々あっても面白い本があったら少しマシになるような気がしていました。「君の膵臓をたべたい」もそんなお話になることを願っています。皆さんの図書室の先生達がイチオシしてくれた拙作をぜひ読んでくだされば嬉しいです。
県内司書の推薦コメント
余命1年ながら「生きることは人とかかわること」と、明るくふるまう主人公が切ない。
ドキッとするタイトルとは裏腹に、とても繊細な高校生の恋愛模様。その純粋さにやきもきさせられますが、同世代の高校生なら共感するところもあるのではないでしょうか。
タイトルからしてインパクトがあり、読み手と近い年代の主人公たちの恋愛物語は共感を得やすいのではないでしょうか。
自分のありのままで付き合っていくという心地よさを感じます。胸キュン物語です。
後半が涙で読めなくなってしまったので、ラスト40頁を別の日に再読。「出会うために生きてきた」と心から言えるのなら、それは何にも代えがたいしあわせと思う。
ヒトリコ
額賀澪 小学館
額賀澪先生からコメントをいただきました
高校生のときも先生から「本を読め」と言われ、大学生になっても教授から「本を読め」と言われ、社会人になってもいろいろな人から「本を読め」と言われます。読書は何歳になっても大切なことなのです。みなさんの大切な読書体験のひとつに、どうぞ私の本も混ぜてください。
県内司書の推薦コメント
壮絶ないじめに耐える孤高の姿が凛として、すがすがしささえ感じる。
「ヒトリ」は厳しいけど、それも有り。
いじめがきっかけで一人でいることを選んだ日都子。みんなに交わらない意志の強い日都子はかっこいいです。
羊と鋼の森
宮下奈都 文藝春秋
宮下奈都先生からコメントをいただきました
この物語は、高校二年生の少年が、放課後の体育館で思いがけずピアノの調律を見るシーンから始まります。普通の高校生には特別なことは何も起こらないと思っている人にこそ、読んでいただけたらうれしいです。選んでくださって、ありがとうございました。
県内司書の推薦コメント
美しくて、とても優しい物語。ピアノの音を探すことと、確かな言葉を探すことは、とても似ているように思います。
主人公が「問い」をたて「答え」を出す課程をなぞっていくことで、これから働くことを経験するひとにとっても、成長を追体験できると思う。著者が、音の美しさをどのような言葉で表しているのかも見てみると楽しいかも。音楽好きなひともそうでないひとにも薦めたい一冊です。
優れたピアニストのもとには、優れたピアノ。優れたピアノの陰には優れた調律師。主人公の若き調律師の成長が麗しい。調律師の仕事の様子がわかる職業小説の側面もあります。
県内司書の推薦コメント
重いテーマの長編、でも頁をめくる手は止まらない。女子生徒に特に読んでほしい。
現代社会の状況が上手に盛り込まれている上にラストに号泣。作者の筆力を感じました。
不妊治療や養子縁組のことがきちんと書かれていて、登場人物の想いと一緒に読むことで身近に感じられる。
親と子ってどういうものだか考えるヒントになる気がします。
火花
又吉直樹 文藝春秋
担当編集者様からコメントを頂きました
このたびは『火花』を選んでいただき感激しています。この小説は芸人の世界を描いた小説ですが、多角的に読んで楽しむことができます。いわゆる爆笑シーンはきっとないでしょう。けれども、体の内部から湧き上がってくるような笑いと、人間存在の根本にある悲しみを受け取っていただければ幸いです。
県内司書の推薦コメント
言わずと知れた芥川賞受賞作。人気芸人が書いたということで話題になったこともあり、読書初心者の高校生も、興味を持って手に取りやすいと思います。自校の生徒たちは「『花火』ある」……と、「いや『火花』だから」と何度訂正したことか。
話題の芥川賞、読んでほしいです。
ここまで話題になる芥川賞受賞作、作家はなかなかでないのでは。
だれもが知ってる小さな国
有川浩 作, 村上勉 絵 講談社
担当編集者さんからコメントをいただきました
何か悪いことをしたら、神様が見ているかもしれない。ずるいことをしたら、葉っぱの影からコロボックルが見ているかもしれない。そう思って生きるのは、なんと素敵なことでしょう。佐藤さとるさんから有川浩さんへと継がれた物語の力を感じつつ、楽しんでていただけたら嬉しいです。
県内司書の推薦コメント
日本ファンタジーの草分け的存在である、佐藤さとる著『だれも知らない小さな国』を下敷きにして、今をときめく有川浩が描いた新しいコロボックルの物語。主人公のヒコは小学3年生の人間の男の子。ヒコの成長に絡めながら、コロボックルの物語が描かれてゆく。この作品をきっかけに佐藤さとるの世界へも足を踏み入れ、日本ファンタジーの世界を堪能してほしい。
大好きなコロボックルの世界を、次の世代にも引き継いでほしい。
中野のお父さん
北村薫 文藝春秋
北村薫先生からコメントを頂きました
授業の最後に「何か質問はありませんか?」といわれて、困ったりしませんか。答えるより聞く方が難しい。身近なところにも、見逃しているけれど、あらためて考えると「なぜだろう」ということがあるかもしれません。よく見、よく聞き、よく考えると、謎が生まれ答えが見つかります。
県内司書の推薦コメント
娘と父が出版界に繰り広げられる謎に挑む。サクッと読めるミステリー短編集。
世界の果てのこどもたち
中脇初枝 講談社
中脇初枝先生からコメントを頂きました
戦後七〇年。これは、あの戦争を生きのびてきた、かつてのこどもたちの物語です。高校生のみなさんが、彼女たちの声に耳をすまし、思いを寄せてくださったら嬉しいです。もうこれ以上、世界の果てが生まれませんように。世界中のこどもたちが、幸せなこども時代を過ごせますように。
県内司書の推薦コメント
フィクションですが、実際にあったことと同じように思えてなりません。これは、後世に伝えていかなければならない事実なんです。
Masato
岩城けい 集英社
岩城けい先生からコメントを頂きました
真人はオーストラリアに住むことになった小学生です。新しい国、新しい言葉、新しい学校、新しい友だち…。 その中で、新しい自分のアイデンティティを探す真人とともに、一歩踏み出す勇気をみなさんと分かちあえたらと願っています。
県内司書の推薦コメント
普段気軽に使っている「国際理解」とか「多文化共生」とかの言葉がいかに困難な出来事を指しているのかがわかる。高校生くらいであれば、主人公にも母親にも共感できると思う。
ラストシーンがじんときます!主人公マサトは母親が求める「日本人らしさ」か、オーストラリアの仲間を選ぶのか、自分の意志で選択します。もし自分が母親の立場だったら?父親みたいに応援できるのか?どんな答えを出すのだろう…。と読みながら一緒に悩みました。
渋谷ギャル店員
ひとりではじめたアフリカボランティア
栗山さやか 金の星社
栗山さやか先生からコメントを頂きました
私は今、モザンビークという国で、貧しい女性や子ども達、病気の人達の手助けをする活動をしています。私はたまたま海外に出ましたが、みなさんもこの本を読んで、自分のやりたいことが何か考え、一日一日を大切に生きていきたいと感じてくれたらうれしいです。
県内司書の推薦コメント
モザンビークで女性や子どもたちのための協会を立ち上げ、現地で医療従事者としての国家資格も取得した著者。本当に「さやか」と「チャラカ」は似ている。すべての意味で。